著:高森顕徹 朗読:鈴木弘子
就職活動
迷えば迷うほど努力がむだになると知ったら、最初に熟慮して決断し、断固努力で突きぬけるがよい。
迷うことなく自分の道を進んでゆくということは、なかなかに難しい
ある晩、ネズミが桶の中に落ちた。とびあがって出ようと、最初は、おおいに努力したが、桶が深くてとても無理だった。
そこで今度は、桶の側を食い破って出ようとかじり始めた。
しばらくやっても、どうも側の木が厚くて硬くて食い破れそうもない。
あわてたネズミは、場所をかえて、またかじる。
ところが、やっぱりだめだった。そこでその場所をあきらめて、また次の場所に移った。しかし、ぶ厚い木は、なかなか、食い破れそうもなかった。
さんざんに、報われることのない努力をしたネズミは、とうとう明け方近く、心身ともに疲れはてて、むなしく死んでいった。
はじめ、かじり始めた箇所を、最後までかじり続けておれば、桶の側の板に、通りぬける穴ができたものを。
世間には、このネズミを笑えない人が多い。
一つのことに失敗して、また他のことに失敗し、転々と自分の仕事をかえてゆく人は、薄志弱行といわれる。
もっとも、人間というものは強いものではない。
迷うことなく自分の道に進んでゆくということは、なかなかに難しい。固い意志と、たゆまぬ努力が必要だ。
迷えば迷うほど努力がむだになると知ったら、最初に熟慮して決断し、断固努力で突きぬけるがよい。
入り口のほうは、とても入る余地のないようにこんでいる満員電車でも、奥へ入ってゆけば案外すいているものだ。
入り口がふさがっているからといって、断じて絶望してはならない。
西洋の、ことわざにあるではないか。
『転がる石には、苔が生えぬ』
- 小を軽視する者は大を失う (大北鉄道会社社長 ジェームス・ヒルの言葉)
- この峠が楽に越されたら、だれでも越して商売するから、あまりもうからないのだ。この峠が、もっと高くて険しければ、だれも、この峠を越えて商いをする者がいなくなる。それを越していけば、商売は大繁盛するのだ。 (江州商人の言葉)
- 人間の卒業式は葬式と心得よ。何事も、それでなければ成就できないぞ。 (品川弥二郎の言葉)
- 彼は一葉の紹介状も持参しなかったが、実に多くの、明白な紹介状をたずさえていた。 (ウールウォース商会幹部の言葉)
- お草履は手前のご主人、お風邪を召しては大変と存じまして……。 (木下藤吉郎の言葉)